雨の日の大きな背中と視点の数について

その日も今日と同じようにひんやりとした雨の降る平日の朝で、

その時の記憶は このツンと鼻に刺さる冷たい空気と甘ったるい焼き立てパンの香り、忙しく揺れる動くプラットフォームの人混みの景色に触れる中で、

僕に当時のあの状況をまざまざと思い起こさせてくれる。

 

その方とは 当時 偶然何かのイベントのご縁で何回かお会いし、そのうちに楽しく情報交換をさせて頂く真柄にさせていただき…

 

その日もそんな楽しみな会合の1日だったのだけれど、あろうことか僕は約束の時間に寝坊してしまい 起きたら集合時間の5分前という時刻だった。

 

集合場所は、最寄り駅から電車で15分程の所。

 

最低限の身支度や家から駅まで徒歩10分の距離、そして 電車の時刻等で頑張っても『35分』はかかってしまう場所に、僕は急いでその方に電話をし 正直に寝坊した事を伝えてみたのだけれど、

 

 

その方は そんな事も気にもしないかのような声で僕の話(言い訳)に丁寧に耳を傾けてくれては、逆にこう聞き返してくれた。

 

 

「何時に来れそうかな?」

「『30分』で行けます。」

 

 

ところで そうした時の“罪悪感”は時に僕にこんな嘘をつかせてしまう。

 

どうしようもない僕の話を聞いてくれる懐や器の大きさに、少しでも早く着くとこをみせたいと、無駄に盛った無理な自分を見せていってしまうのだ。

 

別にそれなら正直に「40分かかります。」と応えればいいだけなのだけれど、そんな時の僕には余裕どころかそんな視点さえも全く見つけることが出来ない。けれども、そんな僕を見越してなのか、その方は最後にこう言って 電話をそっと切る。

 

 

「じゃあ1時間かけていいから、万全の支度をしておいで。この後大学でしょ。」

 

 

 

 

その後 僕は電車に飛び乗り 急いで謝りのメールを打っていたのだけれど、その時の先方からの最後の『返信内容』に一層安心し、安堵し…

 

最終的に その方との本来の約束の時間に45分遅れで合流することとなった。

 

 

 

もちろん、その時の僕は相手の『返信』の意図がどんなものだったのか。

 

そんな事を推し量ろうとする事もなく…

 

 

ーーー ん?あ、いやいや、全然大丈夫。俺もちょうどやりたい事あったし、むしろ助かったよ。急がなくていいから気をつけて ーーー

 

 

あれから月日が経って、 僕も  当時よりは少しだけ視点の数は増えたのかもしれない。

 

それらの視点の数は 僕にふとした時に人が見せる粋な計らいにも運良く気づけたり、はたまた感じさせてもらったり出来るようになったりとかして。

 

 

そんな時、そんな視点が一層僕に感謝の気持ちや安心感、そして感動を呼び起こしてくれては日々の生活を彩り満たされた気持ちにさせてくれている。

 

 

でも ある時ふとどうも気になって、

 

例えば 当時の事を『こんな視点』から思い返すと、時に胸が締めつけられるような想いと 優しさと切なさに気づける事もまた確かであり…

 

そんな時、

僕はそんな大人の背中にしばしば嫉妬してしまうのです。

 

 

ーーー 果たしてあの時、あの方は1時間かけてやりたい事なんて、あったのだろうかーーー

 

 

 

かっこいい大人の背中。
粋な大人の背中。
スマートな大人の背中。

 

 

僕がもっともっとコーチングに触れ コーチングを学び、視点の数を増やしていきたいというモチベーションを抱くひとつの理由は、

 

視点の数が少なければ気付きもしない、

いや、気付きも出来ないそんな粋でスマートな大人の背中をたくさん見ていきたいから。

 

 

 

 

そんな方々が残してくれる残り香に似た「小さな感動」を、数多く味わっていきたいから。

 

 

今のところ

そこに僕の《生きること》の意義や定義の1つが あるみたいなのです。

 

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