その方を見たのは後にも先にもその1度だけでした。
それは2012年の花粉症の到来とともに幕を開けた3月の入社式。
異様な存在感と厳格なオーラを覚悟したはずのその方の第一印象は
『こ、小柄なおじさん…』
でも、そんな印象とは裏腹に、僕達はその経営者が作り上げた無駄のない完璧なシステムの下で存分に鍛えられていきました。
そして、あっという間の4シーズン目。
気付けば僕は退職届を手に突っ立っていました。
師走の一段と厳しい寒さが増す深夜1時過ぎ。
自分勝手な僕をスタッフの方々は笑顔で送り出してくれても、僕の中にはみんなの「誠意」をきちんと受け止められる感情は終わりかけの歯磨き粉のチューブを押し出すくらいにしか残っていませんでした。
そして。。。
僕のファーストリテイリンググループでの生活はわずか10カ月で幕を閉じたのです。
あれから3年。
UNIQLOを去る決断をストアマネージャーに伝えたまさにその日に、ふらっと入った本屋で僕の目にとまったのがこの「ノート」でした。
なんの事もない、書いてあるのは入社前に皆で寝る間を惜しんで暗記した理念やビジョンの数々。
あの時は意味なんて全く深掘りしていく余裕も意識すらもなかったあの「退屈でつまらない」文言達。
でも、こうして個人で活動していく立場になった今、僕は人目も気にせず買った側から貪り読んでいました。
肌身離さず時に電車で時にエスカレーターで時に布団の中で。
知っているはずの言葉なのにまるで部活の合間にがぶ飲みする水のように身体に染み渡って行く感覚。
そんな感覚を感じながら、退職当初はロゴすらも見たくなかった僕は今、かれこれ一ヵ月このノートと共に生活しています。
UNIQLOの同期達は本当に優秀な人達ばかりでした。
社内英語公用語化を打ち出した翌年入社組。学歴はさる事ながら語学力やコミュニケーション力も相当高い。
センスもある。
対人に強い。
何より情熱がありました。
なのにきっと半数以上が僕と同じようにこの会社を去っていった。
なぜなのでしょう?
会社のせいか
人のせいか
それとも
システムのせいなのでしょうか。
3年経って、僕自身は自分をこう振り返ります。
『ほんの少し早かったかもしれないね。』
後悔とはちょっと違う次元の、
「未熟だった」
「浅はかだった」
「勘違いしていた」
という感じが正しいのかもしれません。
そして、もしかしたら僕と同じような気持ちになっている同期はきっと何人かいるのかなとも思います。
僕自身は逃げるように去っていったけれど、あれから心のどこかでずっと自分の弱さを認める事ができず、人を信頼する事ができずにずっと気になって、ひっかかっていました。
それがここ1年くらいでようやくきちんと整理できてきた気がします。
そして、もしかしたら彼等彼女等もまた同様にそう感じているのかもしれない。
それはきっと彼ら彼女らもまた後ろ向きな考え方で振り返るわけでもなく、今や違う会社で新たな事業、今後のワクワクするプロジェクトに心を躍らせているからこそ、ゆっくりと落ちついているんだなとも感じています。
だからこそ、
「じゃあ、また戻りたいですか?」
って言われたらきっと笑顔で
『いえ、大丈夫です。』
と伝えるのかな、とも思うんです。
僕自身はそれはきっとあの『体験』と『この一冊』のノートが手に入ったから。
これだけで今後何年もやるべき事が明確になってくる気がするからです。
この『経営者になるためのノート』は
そんな僕と思いが重なる同期達に是非同じように手に取って見返して欲しいなって思います。
もちろんUNIQLOに携わっていなくてもものすごく柳井社長の伝えたい事や真摯な姿勢が凝縮されているなって個人的には思います。
《2020年5兆円》は、僕が就職活動でしびれた数字。
やっぱり達成して欲しい。
元社員という立場ではなく、
一顧客として
そして
一日本人として。
先日鹿児島の実家に帰った時でした。
地元にある小さなUNIQLOに行ったんです。
お客様は少なかったのもあったけれど、ひとりひとりのパートナーさんが楽しそうに思い思いの接客を楽しんでいるようだった。
その時間は決して会社から押し付けられ縛られた「時間」ではなく、そのパートナーの方がまるで自発的に自分の人生の一部を「提供」しているかのようにみえる、そんな楽しみに溢れているような接客でした。
もちろん全ての店舗がそうではないだろうけれど、少しずつ少しずつ変わってきているんだなあって。
やっぱり凄い方だなぁって柳井社長。
僕にはその内に必ずやっておきたいが目標があって、それは今なおも僕の文章を読んでくださっているお世話になった店舗のスタッフの方々にコーチングの素晴らしさを提供しにいく事。
自分の内面を整え、自己信頼感を強化し、他人とのコミュニケーションの質をよりよく変えることができるコーチングという分野を学べる機会や環境を作りに再び伺ってみたい。
受け入れてもらえるかわからないけれど、あのタイミングで辞めても笑顔で送り出してくれた皆さんへ、今度は僕が心からリスペクトする分野で。
そしてその先に今後、この『コーチング分野』で僕がUNIQLOに非力ながら何かお手伝いができたら。
いよいよ明日からの一週間で今年も残り2カ月。
僕のコーチングを受けてくれている大学受験を控える高校生達はもう、大詰めです。
まずはそんな彼らに出来る事を。
明日も彼らの
【勉強法を変え、空間と言葉を変え、教育を変えていく】
ここまで読んで頂きありがとうございます。
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